焦りと不安で苦しかった開業時代と「3つの決意」

医療法人志朋会 やまむら歯科 理事長 山村 昌弘様

愛知学院大学卒業後、平成15年4月、31歳の時、愛知県刈谷市にてユニット3台で開業。勤務医時代の成功や自信とは打って変わり、1日来院数が1桁という現実に直面する。開業前に心に誓った3つの決意をもとに、理念に共感する人材の育成を泥臭く実践し続けてきた。現在ではユニット19台、スタッフ総勢60名、医業収入は6億5千万円、自費率50%という地域最大規模、好業績の人気医院となっている。


今野 それでは、早速お話を伺っていきたいと思います。冒頭でもご紹介させて頂いたんですが、現在ユニット19台の大型医院をつくられてきた山村先生なんですけれども、開業前後は自信がない時期もあって、非常に、ご苦労もあったとお聞きしています。まず勤務医としての修行時代からご開業、その後一定の軌道に乗るまでのお話について、エピソード等も含めて教えて頂けますでしょうか。

 

山村 まずですね、平成10年、僕は地元の愛知学院大学を卒業いたしました。6年生になった時に、今後、自分がどういう歯科医師になっていくのかということを初めて考えた際に、僕の父は歯科医師ではないです、医師だったんですね。

 

今野 はい。

 

山村 その父は大きな病院、専門医としてバリバリ働く、沢山の患者さんに対して高度な治療を施す。そういった医師だったので、同じ歯科医師という医療系であっても、そういった姿が格好いいんじゃないかということを思い描いていました。

 

ところが、どこを見渡しても、大きな病院ってないことに初めて気づいたんですよね。そう思った時に、結局歯科医師の道というのは開業していく、そこで頑張っていくしかないということに初めて直面いたしました。

 

そう思い全国の開業医というところをまずは調べたんです。ちなみに県外でも2件くらい見ましたし、ただ最終的には同じ愛知県ですが、違う市である豊田市にあります大型の歯科医院で修行させていただくこととなりました。

 

今野 これは先生やっぱり大型の医院をあえて選んだということなんですね。色んな見学をした中から。

 

山村 そうですね。ですから、まずは技術をつけたい。それも早く。それが僕の中での一番大事なポイントでした。勤務医時代の歯科医院は沢山ドクターがいたので、患者さん側から、「このドクターがいいよ」と指名することが出来ました。

 

だからこそ自分の中では、その歯科医院の中でも、1、2を争うくらいの割合を確実に手にしていましたので、開業してもやっていけるんじゃないかという意識は持っていました。

 

今野 手応えは感じたんですね。

 

山村 ただですね、そのことを初めて親に相談しに行くんですね。開業となると1人では無理ですので。

 

今野 はい。

 

山村 本当に毎日毎日、頭下げに行って、もう気付いたら、ひと月、ふた月と、頭下げに行ったんですけれど、最終的にはここまでが限界だから、ごめんねということを言われて、1千万円だけの保証人の欄にハンコをいただきました。

 

今野 なるほど。でも1千万円じゃ開業できないですよね。

 

山村 そうなんですよね。実は妻の実家がですね、事業をされているお家だったので、事業を始める時に借金をするということに対しては理解があった義理の父だったものですから、そちらの方でもちょっと頭を下げてですね、プラス1千万円と。

 

あともう1つは自分だけで借金ができる枠で1千万円。合計3千万円のみで開業する計画を立てることとなりました。ただ運が良かったのは、この3千万円では通常開業が無理な数字なんですけれど、ある方が手を挙げて下さって、「じゃ、この土地を貸してやる」と。「プラス建物も建ててやるから、あとはもう月払いで払ってくれればいいよ」という、いわゆる初期投資を落としたプランというのが可能な、そういった機会に恵まれました。

 

ただやはり、その方が土地と建物を用意してくれるんですけれど、その方に対してお支払いしないといけないので、実際銀行でもし借りられたとしても、その返済よりは大きなお金を毎月お支払いしないといけないというスタートだったんですね。

 

ですから沢山患者さんに来ていただかないと難しいだろうということを思いましたし、週休2日なんて休んでいる暇はないとも思いましたので、月、火、水、木、金、土、と働き、日曜日は色んなセミナーに顔を出してという生活を始めることとなりました。

 

今野 なるほど。その当時の心境って、一言で言うと、どんな感じだったんですか。

 

山村 えっとですね、楽しみとか、夢とか、そういったことは一切ないんですね。それよりも、まずこの支払が上手くやっていけるのかどうか。

 

当時、結婚していまして、妻もいましたけれども、まだ子どもが生まれて間もない頃でしたね。ですから、この子を育てていけるのかとか、やっぱりそういう不安の方が大きくて、何をしたい、それよりも不安いっぱい。

 

それだけでした。開業するにあたって、やはり簡単ではないスタートを切らざるを得なかったので、生半可な気持ちではなく、決意を持ってやり続ける、やり切るということを、最初に決めました。それが3つの決意です。自分の中で確実にこれだけはやり通す、何があってもという本当の意味での決意ですね。

 

今野 3つの決意の内容についても教えていただけますか。

 

山村 1つ目は、「一生涯勉強」。勉強というのは机に向かうだけじゃないとは思うんですけれども、現役で患者さんと接する以上は何かしら向上心を持って取り組みをしていこう。「一生涯勉強」というのが1つ目です。

 

医療は日進月歩ですので、必ず新しい情報もありますし、それを取り入れていかないといけないと思いまして、現役である以上はということ。「一生涯勉強」ですね。

 

今野 はい。

 

山村 2つ目は、病院って好きだと言う人はいないと思うんですけれど、特に歯科は嫌われた存在ということはよく耳にします。だからこそ、嫌われているのであれば、どうして嫌われるんだろうということを考えて、その真逆をすれば少しは患者さんが楽になるんじゃないかなと。

 

それは例えば元気に応対してもらえたり、笑顔をくれたり、そんな歯科医院があってもいいんじゃないかなと。ですから受付で必ず笑顔で挨拶をしたりだとか、中でも色んな雑談が出来るような、そんな歯科医院にしたいんだ、「元気と笑顔」を提供する。それが2つ目です。

 

今野 はい。

 

山村 3つ目は、昔からすごく感じているんですけれども、歯科医院に対して「何々された」ということを言われている方が非常に多い。「削られた」、「銀歯にされた」、「抜かれた」。医療行為なのに「何とかされた」という言葉が非常に多いのは、当たり前ですけれど、歯科医師としては嫌なんですね。

 

でも、どうしてだろうと思った時に、やっぱり、その方がご納得されていない。そこに尽きるということを思いました。だからこそ全ての方に、きちんと説明をして、同意を得る。そのステップを踏んでからじゃないと治療するのはやめよう。どんな方に対しても、今で言うとカウンセリングという言葉ですけれど、カウンセリングを行って治療にあたろうと。3つ目は「カウンセリング」ですね。全ての人にカウンセリング、それを決めました。

 

今野 実際に開業された後は、どうでしたか。どんな立ち上がりというか、開業してみて。

 

山村 初日は12人来て下さいました。2日目は8人、3日目はだんだん下がってくるんですね。

 

本当に少ない時は3人とか4人とか、実際開業して最初のうちはそれぐらいを過ごしていました。その時のスタッフと1つ目標を立てて、1週間連続で2桁の患者さんがいらっしゃったら、ご飯を食べに行こうと。

 

それが実現できたのは4か月目くらいでしたね。

 

今野 なるほど。この段階では、まだ2桁が1週間ということなんですけれど、ようやく息がつけるようになったなというまでは、だいたいどのくらい期間かかったんですか。

 

山村 そうですね、半年以上はかかりましたね。本当に一息つけるようになったのは、もう2年くらいはかかっていたと思います。

 

今野 あー、そうなんですね。すごくその辺が、先程お話したユニット19台って、ある意味、今この地域の中で一番大きな医院だと思うんですけれど、聞いていてギャップというか、最初から成功軌道に乗ったのかなというイメージを持っていたんですけれど、最初は相当苦労されて。

 

山村 そうですね。ただ当時忙しくなってからのスタッフとよく話をしたんですけれど、いわゆる診療時間中にめちゃめちゃ時間があるんですよ。

 

今野 はい、はい。

 

山村 スタッフとミーティングする時間。ロープレする時間。それはその時のうちの医院の状況だったからこそ、好きな時間、好きなだけやれる。その環境だったので、実際ボーっと外を見ていただけではなくてですね、ホワイトボードに歯の絵を描いて皆で勉強したりですとか、自分の携帯から医院にいたずら電話をして電話応対のロープレをしたりですとか、そういったことを毎日ひたすらやっていましたね。

 

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